恐る恐る振り向くと、さっきの美女が腰に手を当て威嚇するように睨んでいた。
「あんた、翔って名前?」
「……だったら何だよ」
「ミサキ!!」
「は?」
ツカツカとヒールを鳴らしてコチラに歩いてくる。
「私、美咲」
「はぁ?!」
美咲ってあの美咲?
嘘だろ?
こんな美人なんて聞いてないし。
「なによ?」
眉間にシワを寄せて睨んでくる。
「……お前、本当に美咲か?」
「さっきからそう言ってるでしょ?そんなんで受験大丈夫?」
……あ〜、コイツは美咲だ。
外見に惑わされたけど、中身は生意気な美咲だ。
「こう見えて、俺、やれば出来る子だから」
にっこりと微笑むが、美咲の整った顔を前にするとどんな笑顔も太刀打ちできないと思った。
周りの目が訴えかけてくる。
『お前には不釣合いだよ』
『あんな美人がなんであの男と?』
わかってる。わかってるよ。
「美咲、ごめん。俺、用事思い出した」
参考書をカバンに突っ込み、コーラを一気に飲み干して立ち上がる。
「は?なんで?」