まるで丘一面に咲いた花のように。
棺(ヒツギ)の背景は花だらけ。

真ん中に笑ってる「あいつ」
……の写真。

馬鹿じゃねーの?
写真と実物、めちゃくちゃ違うだろ。

詐欺だろ、それ。
お見合い写真だったら訴えられるぞ?

つか、この歌。
歌っつーか……お経?

何て言ってるかわかんねーっつうの。
俺らが、わかんないからって適当に言ってんじゃね?
高い金貰ってるくせによー。

『あの、君…… 次が……』

あ?
何だよ、おっさん。

『次がね? 待ってるから……』

何だよ何だよ。
悲しみに浸る時間さえ与えられないってか?

有り得ねー。

『君、早く……』

わぁってんだよ。
焼香、焼香ってね。

3回?
2回だっけ?

ほら、額までもってくの。

つか、全部やっちゃう?

『君!? 何してるんだ!?』

俺の手、妙な感じ。
自分の手が自分の手じゃないような……
なんか変。

『罰当たりな!! この場を何だと思ってるんだ!?』

は?
何だと思ってるって?

……教えてやるよ。

『何とも思ってねーんだよ。 馬ぁー鹿』

花も要らない。
全部くちゃくちゃ、撒(マ)き散らしてやる。

お経も線香も。
坊主もいらねーんだよ。

『俺は、あいつが死んだなんて認めねーよ』

こんな茶番、早く終わらせろよ。