「何よ。うるさいんだけど」


焦りともとれる声で真さ…涼太さんの制止に月はぎろっと…って効果音が入るくらいそちらを睨んだ。
けど、涼太さんは何も言わなくて目だけで訴えかけてるように見えた。


「…ここじゃなんだから、場所を変えてもいい?」


あたしは月の言葉にコクンと頷いた。
未だにあたしは放心状態。


ってか、月いつもよりかなり優しい。
そんな事聞くなんて月らしくない。
けど、きっとその優しさは泣いてしまったあたしへの気持ちでそれを考えると無性に嬉しかった。


「…スタッフルーム空いてる?使いたいんだけど」


今度は、そんなに怖くない声で涼太さんに月が聞いた。
涼太さんは何かに諦めたような表情になって、それから

「今なら空いてる。言うつもりなら、俺も一緒に聞きたい」

とじっと月を見つめながら言った。
そんなに月のこと見るなんて嫉妬しちゃう。
この2人の空気にも気付かずあたしは呑気にそんなことを考えてた。



「…分かった。行こう、雫」


そう言って笑った月の笑顔はいつも通り可愛くて綺麗。
つい、口に出そうになったけど、慌てて口を押さえた。
そんなあたしに不思議そうにする月。

危ない、危ない。
何か月、綺麗とか可愛いとか嫌いそうだったもんね。


「うん」


これ以上言ったら、余計なことを喋ってしまいそうで。
あたしはもう口を開けなかった。