「ここから一番近い薬屋ってどこだっけ?」
伊織はいつも昼食を、弁当ですませている。母親が伊織のために、毎日作ってくれる。
帰りはいつも寄り道もせず、まっすぐ家に直行だ。仕事とプライベートはきっちり分けるタイプだ。
そのせいで、学校の周りの地理には驚くほど疎かった。
「こっちかな。」
とりあえず、駅の方に行けば何かしらあるだろう。そう思い、足は駅へと向かった。
「遠い・・・。」
伊織の学校は郊外にあった。朝は駅からバスで通っている。しかし、あいにくこの時間はバスはほとんど走っていない。永遠とも思える長い行程だ。
「コンビニで、薬も売ってればいいのに。」
学校の側には、今見ているコンビニしかない。それ以外は畑だ。なんとのどかな風景なのだろう。
しかし、こののどかな風景のせいで、伊織はつらい目にあっているのだ。気がつけば、とても恨めしそうな目つきになっていた。