「ただいま。」
勢いよく玄関のドアを開けた。しかし、誰も迎えに来ない。いつも玄関を開けた時に必ずいる、マルチーズのチロルもいない。文太は少し変に思った。
「おかしいな。帰るってメールもしたのに・・・。」
靴を脱ぎ、リビングに向かおうとした。目の前を、チロルが通り過ぎる。
「チロル、チロル。お父さんが帰って来ましたよ。」
両手を大きく広げ、チロルを迎える準備をした。しかし、チロルは文太に気がつく事もなく、どこかに行ってしまった。
(機嫌でも悪いのか?今までこんな事なかったのに・・・。)
不安になった。何とも言えない感覚だ。