会社に入るが、誰も気がつく様子がない。電話をしている者、パソコンに向かい書類を作っている者、例えどんな仕事をしていたとしても、必ず挨拶があった。文太の巨体には存在感があるから当然だ。
(ど、どうしたんだ?)
違和感を感じた。しかし、文太はすこぶる機嫌が良かった。だから気にしない事にした。機嫌のいい理由は簡単だ。ほぼ無理矢理買わされたような、あの痩せ薬が思いの外効いたのだ。わずか一日で五キロも痩せるなどと、誰が想像するだろうか。