こうして私の挑戦が始まった。具体的に準備を進めるには、まず留学先を決めなければならなかったが、これが結構難しかった。私一人なら、できれば日本人の少ないところに行きたかったが、幼い息子を連れていくとなると、都会の方が何かと便利だろう。北京は首都なので、政治的な理由で何か起こる確率がほかの都市より高いだろうし、何より私は寒さに弱い。広州・深センは、ここ数年、経済成長とともに治安も悪化の一途をたどっていると聞く。となると残りは、上海、か。
 消去法で決めた留学先だったが、今思うと考えるまでもなかった。なぜなら、私の唯一の中国人の知り合いが上海に住んでいたから。彼女は私の普通話の先生でもあり友人でもあった。日本に6年住んでいた彼女はもちろん日本語もペラペラ。しかもタイミングよく上海に帰ったところだった。親切な彼女は帰国するとき、
「上海に来るときは、必ず連絡してね。」
と言っていた。
 ネット上で上海の情報を収集したが、ほとんどが中国を好き勝手に非難したもので、何が本当かわからなかった。これは、自分の目で確かめに行くほかないと思った。