息子が感じた上海  
 初めて上海に行ったとき、街がよどんで見えた。どんなに目を凝らしてみても景色がかすんで見えた。黄砂の影響かとにかく視界がはっきりしなかった。息子も同じように感じていたらしく、日本に戻ると、
「おそらが あかるいね」
と言っていた。
 息子は中国語がだんだん話せるようになると、
「ぼく もうすぐ りっぱな ちゅうごくじんに なれるね」
と、よく言っていた。
 息子と出掛けると決まって聞かれることがあった。
「パパは中国人?」
 私の話すのは外国人の中国語、息子の話すのは、一般の中国人と変わらないらしい。誰が中国を教えたのか?パパが教えたのか?って。彼は生粋の日本人です。
 もうひとつは、
「君は、男の子?女の子?」
 これは、100%近くの中国人が息子にした質問。どちらかといえば優しい顔立ちだけど、日本では間違いなく男の子だ。中国では、普通男の子はカツオ君。女の子は、ワカメちゃんカットの子がたくさんいる。だから、ちょっと優しい顔の、丸坊主じゃない息子は、判断に困ったのだろう。
 見た目は女の子、でも動きは男の子。(服も男の子なんだけど)「男の子」と、答えても納得できないらしく、数分後にまた同じ質問をされる。
「だから、どっちなの?」
「だから、男の子だって。」
 始めは息子も怒っていたけど、出掛けるたびに聞かれるので、そのうち慣れたようだ。

 ある日、子供向けの番組から流れてくる、 
「ちゅうごく ちゅうごく いちばん きれい♪」というフレーズを聞いた息子がひと言。
「って、そんなの うそ だよねー おかあさん」
 これって、本音だなって思った。5歳の子にだって空気のよどみがわかる、街の汚さを知っている。本当の上海って一体?