「午前授業、やっと終わったー。お腹ペコペコ」
ユリ子がお腹を押さえて机に向かってうなだれる。
友だちがいれば、こんなことしても一人芝居にならない。
「ユリ子、どこいく?駅の方にでもいく」
朝から水城とずっと一緒。
友だちっていいなーと、感じる。
「え?そんな遠くにはいけないでしょう?」
「何言ってんのー?今日は午前授業で終わりじゃない」
「うそ!聞いてない、聞いてない」
ユリ子は目を輝かせる。
午前で授業が終わりだから嬉しいわけじゃない。
放課後に友だちとブラブラする。
こんな学生っぽいこと一生できないと思っていた。
それが今、実現しようとしているのだ。
「と、言うわけで、どこいく?」
水城が垂れる髪の毛をすくい上げ、耳にかける仕草をみていたユリ子。
目に入ってきたのは、ピンクのヒアス。
ユリ子はつんと、突付いてやる。
「うーわー。百理もやることはやってるのね。お嬢様のくせに」
「だって、うちお嬢様学校だから、定期検査しないじゃん」
確かに、風紀が乱れていないため頭髪検査やピアスの検査をするまでもなく、
みたこともなかった。
「いいなー。開けるの痛くなかった?」
「んー、あんまり」
「へー、そうなんだー。へー」
ユリ子がうらやましそうにつぶやく。
「んーもー!そんなにうらやましいなら開けちゃえば?」
耳を見られすぎて、水城は立ち上がって言い放った。
「え?」
ユリ子は開ける気満々で、目をキラキラさせていた。