ユリ子は番号をひとつひとつ丁寧に押した。
コールの回数が続くほど、ユリ子の緊張は高まる。
出て、出ないで。
そんな思いの繰り返し。
蓮山は気を利かせて、声の届かない場所へ移動した。
ガチャ
「はーい。だあれ?こんな朝早く」
水城の声だ。
「あの、私。佐瀬ユリ子です」
「うそ!?」
「ホントよ」
「どうしたの?なにかあった?」
「う、うん」
ユリ子は躊躇(ちゅうちょ)する。
こんなこと頼んだら、嫌がられないかしらとか、
水城がユリ子の肩を持つより、ユリ子の父を味方した方が有利だと考えて、裏切ったりしないだろうかとか、
考えがいろいろ巡る。
「佐瀬さん、昨日休んだよね?それと関係あるの?」
水城さんなら、大丈夫。
もし、裏切られたら、もう二度と人を信じるのはよそう。
覚悟は充分だ。
「あのね、私・・・・・・」

