あれは、5月の連休明け。
まわりはユリ子の取っつきにくさに、距離をおきはじめていたころ。
水城百理はその日も些細なことで、ユリ子に話しかけてきたのだ。
「ええ!?ケータイもってないの?」
百理のヒドイ驚きように、たじろぐユリ子。
「そんなにおかしいかな?」
ユリ子がケータイを持っていないのは、父の方針と言うこともあるが、必要がないから。
「仕方ないなあ。これ、あたしのケー番ね」
ビリビリと破ったノートの切れはしに、スラスラとペンを走らせてユリ子に渡した。
いらない、なんて言わせてもらえなかった。
―――図々しいくらいが調度いい。
ユリ子はカバンを肩から外し、あさる。
確か、この中に。

