岩影にユリ子は丸くなって座っていた。
「おい、なにしてんだ?」
「海をみていたの」
蓮山はほっと、胸をなでおろす。
真っ直ぐと向けられた目線の先には、海。
しかし、それは黒光りしていて決してキレイと呼べるものではなかった。
「あのさぁ、」
蓮山は、そろそろ帰ろう、そう言おうとした。
でも、言えなかった。
ユリ子は寂しそうな目をみてしまったから。
蓮山は心ごと奪われた。
ユリ子の目は15歳のあのときの蓮山の目に似ている。
俺の人生を変えたあの日。
俺もそんな目をしていた。
「俺んち、泊まる?」
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