「彼女?」


立ち上がって、話が聞こえないように、距離をとろうとする蓮山を

どうしても止めたくて出た言葉。




耳に当てていたケータイを外し、振り返った。


「仲間。ダチだよ、ダチ。友だち!」


それだけ言うと、ケータイで話はじめた。


友だちかぁ。

いいな。


ユリ子にもいるけれど誰も信用できない人たちばかりだ。

利用しようと、近寄ってきているようだけだから。


ユリ子には友だちなんて呼べる人がいなかった。




暗闇に目がなれてきた。



蓮山は背中を向けている。

昼間はすぐ後ろにいて、それも近すぎるくらいに。

そのときは、はっきり見えた背中。



今は遠すぎて、


表情がわからない。




今は

真っ赤なタバコだけがくっきりとみえる。



電話、長くなりそう。


ライタが放り投げられて、砂に半分埋もれてた。


花火つけたら、この気分も紛れるかな。



ユリ子はそっと花火へ手を伸ばした。


素早い、黒い影が通った。


「ひゃっ!」