お嬢様とヤンキー



「花火もはじめて?」

今度は蓮山から。


「小さい頃に一度だけ」

「へぇ、」
意外だと言いたげだ。


「あ、でも、お付きの人が持っているのをみてただけかも」

「それ、花火したって言わない」

「そうかしら?」


それなりに楽しかったし、綺麗だったけどな。


しゃがんで向い合わせのふたりを

パチパチと光が色を変えて照らす。



実際、手で持つと少しこわい。




「どうして家に帰りたくないって言ったの?」


「大したことないわ。ただの両親への反抗。」

反抗期なの、私、と、ユリ子は笑った。


蓮山は笑わない。

「今は?今も帰りたくない?」


ユリ子はコクンと一回だけ首をたてにふった。



蓮山の花火が終わり、


続くようにユリ子の花火も消えた。



蓮山は今度は花火ではなく
ライタでタバコに火をつける。


ぼんやりと辺りを照らす。

お互いの顔はみえない。

それくらいの弱い明かり。



きっと蓮山は困ってる。

「あの、私ね」

「ごめん、ちょっと電話」