ピアスが右に3つ、左に5つ。
蓮山の後ろ姿から読み取れる、わずかな情報。
ユリ子は自分の耳を、ピアスの位置に真似てツメを立ててぎゅっとおしてみたが
すごく痛そうな場所がいくつかあった。
蓮山がミラーを確認たびに、シャープな顎がちらりとみえ隠れする。
ユリ子は思わず、蓮山にまわす腕に力をいれた。
「どうした?こわい?」
ミラーで目が合う。
ユリ子は首を左右にふった。
それを確認すると蓮山は前を向いた。
すこしカーブした、辺りに民家がなく、森の中を走っている感覚になる、
そんな道。
一定の速度で坦々と走る。
どこに行くのかな。
さっきよりもずっと遠くに向かってる気がする。
どこでもいいや。
もう、このまま帰りたくない。
ユリ子は目を瞑った。
お嬢様と言う肩書きをとったら、
きっと私、真面目でつまんない子だと思うんだ。
だってね、遊びなんて知らないの。
学校が終わって帰っても、すぐにお稽古で、遊ぶ暇がなかった。
ちょっとくらい、悪いこともしてみたかった。
悪いことをすれば、佐瀬家にも関わるから出来ずにいたんだ。
でもね、彼は私のこと
お嬢様にしておくには勿体ないなんて言ってくれた。
彼はたくさんの遊びを知っていて、教えてくれる。

