蓮山はユリ子が着替え終わるまで立ち読みでもしようと、雑誌コーナーへ向かうと声をかけられた。
「君、白馬台高校だよね?」
げ。補導員だ。いつからいたんだろう。
「ええ、はい」
「ふーん」
なにか言いたそうに、補導員は蓮山を下から上へ視線うつした。
よりによって、男だ。
蓮山はおばさん受けの方がいい。
「なんスか。定時はもう終わりッスよ」
「一緒にいた子は?トイレ入ってたね」
「・・・・・・」
いつから見張ってたんだよ。
ユリ子が今出て来たらごまかせない。
出てくんなよ。
蓮山は願った。
あれ?
俺、彼女に関わるのはよそうって思ってなのに、なに考えてんだ。
このまま、補導されれば。
このまま、俺だけ逃げれば。
関わらずに済むのに。
ガチャ
ドアが開いた。
ちっ。蓮山は心の中で舌打ちをした。
同情を天秤にかけてしまう。
蓮山の悪い癖だ。
どうか、彼女が余計なことを言いませんように。

