ユリ子がトイレへ入るのを見送り、蓮山はため息をついた。
私立桃ノ華学園は女子校と、蓮山の通う公立白馬台高校は共学で結構近い。
蓮山は桃ノ華学園の生徒をみたことがある。
それなりに有名だと知っている。
もちろん、制服が目について振り向く人もいただろうけれど違う。
制服だけ、って言うのは嘘だ。
ユリ子の容姿がみんなを振り向かせていた。
本人にあえて言わなかったのは、どうも、普通でないことにコンプレックスを持っているみたいだから。
バスに乗ったとき真っ直ぐな姿勢に、すっと伸びた鼻、
丁寧に手入れをされている髪、素敵だなと思った。
だから、蓮山は声をかけた。
きっかけさえ作れればあとはどうでもよかった。
そして、さっき知ったこと。
yuriって名前にピンときた。
男子の中では結構有名な話で、
桃ノ華学園のお嬢様の中のお嬢様は姿を現すことは滅多にないという。
そして、名前のリストがチラホラあがっていて、聞いたことがあった。
その中に確か「yuri」のつく子が入っていた。
リスト外の可愛い子はチェックされているので、これだけの美人が見落とされるはずない。
些細な出来心で、話しかけただけ。
あまりにも世の中を知らなすぎて面白がっていたけれど、ここではっきりしせないとまずい。
かまをかけて、家に帰りたくないのか聞いたら、あててしまったみたいだし。
面倒はごめんだ。
そもそも、
お嬢様なんて厄介なんだ。
か弱いし、わがままだし。
さて、どうしたものか。

