「電車に乗りたい〜〜〜!?」
蓮山はとてもびっくりした。
「はい。そんなに大きな声をださないでください」
「電車乗ったことないの?見たことは?」
「見たことはあります」
現物はなくて、テレビでならだけど。
「うーん、そっかあ。ないのかあ」
「私って普通じゃないかしら?」
ユリ子が悲しそうな目をする。
ヤンキーからは笑顔が消え、一呼吸おいてから言う。
「・・・・・・普通ってそもそもなに?」
意味深になことばに
真剣な眼差し。
そんな顔もできるんだ。
ユリ子の心臓が高鳴る。
「うーん、」
ユリ子は目線を外し、落ち着いて考えた。
蓮山の真剣な目付きが止み、笑顔になる。
何もなかったように蓮山は歩く速度を早めた。
「とにかく、牛丼食おうぜ」
「・・・・・・くおう」
ユリ子はボソリと呟いた。
まあ!下品だわ!
母が聞いたらそう言うだろう。
「え?なんか言ったか?」
「なんでもないですわ!食おう、食おう!」
子供が大人のマネをするように、ユリ子は蓮山もとへ走った。
そして、ふたりは駅前の牛丼屋を目指して歩いている。
やはり、どこかから見られている気配。
椎名かと思い、ユリ子は振り向くがいなかった。
蓮山もなにか感じ取ったようだ。
「目立つな」
「え?」
「さっきから、お前のこと振り返る人が多い」
「どうしてかしら?」
「制服着てるって言うのもあるけど、」
蓮山はそこで一旦止めて、ユリ子を一瞥する。
ユリ子はその視線を感じ取った。
「普通の人と違う?」
「とにかく、着替えよう」
蓮山は質問に答えずに、ユリ子の手を引っ張った。