ゲーセンをでて、ひとまわりするとここが駅前だということがわかった。
ピアノの発表会で一度だけ通ったことがある。
通り道だったので素通りしただけ。
ユリ子は電車を使ったことがない。
遠くのほうで、でも今までで一番近くで、電車の音がする。
駅からだと学校までバスで30分ほど。
家まではさらに10分かかる。
ユリ子はそこまで遠くではなくて安心すると同時に、見つかる可能性におびえた。
なんとなく、誰かにみられている気がする。
ふたりは駅に向かって歩いていた。
そろそろお腹のすくころ。
昼の12時も回ったから、ご飯を食べることになった。
みることなすこと全てに驚き、感動するユリ子の姿を蓮山は面白がっていた。
「牛丼でも食べるか!?」
蓮山の提案に、やはりユリ子はにっこりする。
「ぜひ、お願いします!お腹もすきましたし、そのぎゅ、ぎゅー・・・?」
「牛丼!」
「そう、牛丼!それをいただきたいですわ!」
「牛丼って単語も知らないんだ」
「知らないついでに、お願いがあるんです」
「なに?」
「びっくりするかも知れないんですけど・・・・・・」