お嬢様とヤンキー


「ごめん、退屈だよな」

ユリ子が黙っているから、蓮山は気遣ったのだ。

二回目だ。

蓮山がユリ子に謝った回数。

ヤンキーなのに、らしくない。

可笑しい。


失礼にあたるから、ユリ子は笑ってごまかした。

「全然、平気です。私もやろうかな」

隣の台にコインを入れようとしたユリ子を蓮山は止める。

「そこはダメ、俺の向かい側座って」

「え?隣じゃ気が散っちゃいますか?」

「とにかく、そこでやってみ?」

ユリ子は言われた通り、移動した。



画面の指示通り進み、ネームを【yuri】にする。

操作はさっき蓮山に教えてもらったからなんとなくわかる。



いざ、対戦。



「kyou!?」

対戦相手の名前!

蓮山は横から顔をだして得意気に笑う。

「向い合わせのマシンは対戦できるんだぜ」

「クスクス」

ふつふつと込み上げてくる笑い。

ユリ子は心の底からだと感じた。




蓮山はサプライズが好きだ。

終わって店をでる前にトイレに寄った時もそうだ。

ユリ子がトイレから出ると缶ジュースを買ってくれていた。

「ありがとうございます」
「付き合ってくれたお礼」
「そんな・・・・・・」





退屈はしなかった。

なにもかもが新しいから。

新鮮さが面白いからだと、ユリ子は思った。