ゲームセンターの奥へ進むと、手前のスペースとは異なる雰囲気が漂う。
一般向けなゲームとは違って、マイナなゲームだ。
明かりが半分に減少。
ちょっとこわいと、ユリ子は思った。
蓮山はいかにもといった風に、場の雰囲気にぴったり。
それに、場馴れしている。
蓮山のこわさが一層、引き立つ。
場違いだ。
ユリ子は思った。
世間知らずのお嬢様には知らない世界がある。
危険な香り。
それが、わからない。
無知でこわくなった。
足を踏み入れないほうが、幸せってこともあるかもしれない。
今ならまだ間に合う。
引き返そう。
「あ、あの」
「何も言わないでごめん。ちょっと1ゲームしていい?」
ハマってるんだ、と、蓮山は無邪気な笑顔をみせた。
「どうぞ」
蓮山の裏のない笑顔がユリ子を安心させた。
ユリ子の返事をきいて、蓮山はさらにはしゃいでコインを入れた。

