ユリ子は高校三年生だ。
卒業後の進路は前々から決めてある。
あとは父から許可をもらうだけだ。
そう。
なにをするにもこの家では父に許しを貰わなければならなかった。
そして、
ユリ子の選択を父が決して許すことがないことをユリ子は知っている。
最近耳にするうわさが本当なら・・・・・・
大学へ行きたい、だなんてきいてくれるわけがない。
ユリ子は大学へ進学したかった。
「お嬢様。お言葉ですが、もう家を出発しなければならない時刻です」
ユリ子の斜め後ろには執事が言う。
名前は椎名。
佐瀬家に遣えて間もないが、ユリ子からもユリ子の両親からも信頼を得ていた。
「ああ、そうね」
ユリ子は母を一瞥した。
答えるように母は言った。
「食べてはだめ。お父様がいらっしゃるのよ、今日くらい遅刻してもバチは当たらないわ」
「そうね」
ユリ子の意見はここでは反映されないのだ。