「あなたがユリ子?」

「誰!?」

ユリ子は少なくとも呼び捨てされたことに腹がたった。


「あたし、ミンク」

「あ・・・・・・」

気の強そうな人。

さっき、蓮山と一緒にいた人だ。

嫌み言われそう。

ユリ子は俯く。



ミンクはユリ子の横にあぐらをかいて座る。


「あのっ!」

ユリ子の突然大声にミンクは構えた。

「な、なによ」

「ミンクさんこそ、なにか用があるんじゃないかしら」

「やめてよ」

ミンクはお腹を抱えて笑う。
ユリ子はミンクのひとつひとつの動作が気に触る。




美しくない。

女性らしくないのだ。


ユリ子が生まれたときから、

言いつけられていたこと。

それらを一切、彼女には備わっていない。



涙まで流し、笑ったミンクはユリ子を気に入ったようだ。

「呼び捨てでいいよ」

「はい、じゃあ、そう呼びます」

「なんか、堅いなあ」

「ミンクさんが砕けすぎなんだと思います」

「もう!呼び捨て!」




ミンクはユリ子にないものを持っている。



「ねぇ、ユリ子」

「なに?」



とても素直な人だ。

だから、思ったことも平気で聞けちゃう。


「恭介のこと好き?」

「・・・・・・」

「私はね、好きだよ」


平気で口にできちゃう。


ユリ子は、ミンクを羨ましく思った。