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急に広場がシンと静まり返った。
パン
パン
二回、クラッカーの音が響いたあと、一気に盛り上がる。
ユリ子と椎名は目を合わせ、パチクリとまばたきを入れた。
「これより、開会式をはじめます」
中央を囲うように円を描いている。
その中心に、両チームの一番偉い人がにらみ合い、その横で、司会をしている人がいる。
「司会には毎年新しく入ったやつが選ばれる」
横で説明をしたのは蓮山だ。
「そう、ですか」
ユリ子は先ほどのことで、上手く笑えなかった。
「あれ?」
椎名がいない。
「どうした?」
「なんでもありません」
「嘘だ」
蓮山が強く言う。
「さっき俺の方、見てただろ?」
「か、勘違いしないで!んんっ「しっ」
ユリ子は蓮山の手で、口元を塞がれる。
「あんまり大きな声出すなよ」
ぎこちない司会はまだ続いていて、ユリ子の声に数人が振り返っていた。
ユリ子は蓮山の手から逃れるようにうつ向いた。

