今、手を差し伸べたら怒るだろうか。
でも・・・・・・今にも落ちそうだし。
蓮山は意を決してゆり子の方へ向かった。
だが、すぐに足がとまる。
だれかがゆり子に近づき、手慣れた手つきでゆり子をバイクから降ろした。
椎名だ。
ゆり子ははじめ驚いた表情を見せたが、見たこともない笑顔をみせた。
「恭介!おめでとう!」
メンバーに選ばれた蓮山は引っ張りだこだ。
「なんだよ」
「なんか浮かない顔してるわね」
蓮山の頭からさっきの映像が離れない。
おっきなバイクにまたがって現れたのはこの周辺では唯一のレディースのひとり美空(みく)だ。
みんなはミンクと呼んでいる。
長い髪の毛をひとつに結び、ショッキングピンクの特攻服を見にまとっている。
ここではみんな名前やあだ名で呼ぶのが決まり。
本名なんてすぐバレてしまうけど、みんな詮索しないから知らない。
ただ、特別に仲良くなると知る機会も増える。
「ミンク」
「なに?」
「いや、なんでもない」
蓮山はいいかけた言葉を飲み込んだ。
「あっそ」
バイクから降りようとしたミンクに合わせて、蓮山が手をとった。