「おなじ衣装をまとった人がいっぱいね」
そこは会話をして相手の声がかろうじて聞こえるほどだった。
ユリ子を乗せた蓮山のバイク音が止んでも、別のエンジン音が響く。
蓮山がすばやく降りてメットをはずず。
ユリ子が慎重にバイクから降りようとするが危なっかしかった。
蓮山は手を差し伸べようかと思ったが、やめた。
昨夜と同じように手をあしらわれる事を恐れたからだ。
「俺、ちょっと挨拶にいってくる。そこから離れるなよ」
「え、ちょ、ちょっと!」
ユリ子は着慣れない特攻服姿で、バイクから降りるのを手伝って欲しいと思っていたところ。
必死な引止めにもむなしく、蓮山は遠くへ行ってしまった。
蓮山は総長へと向う。
弘人の件を話すためだ。
総長は話を聞き終える前に、口を挟む。
「弘人の代わりだったら、俺らのところから出せばいいじゃないか。なんでわざわざ外のやつに」
総長は蓮山の想像通りの反応を示した。
「総長。俺たち南十字星は強いチームでなければいけません。今の総長の作戦だと、落ちぶれたものだと批判されるにきまっています」
もうすでに、一部ではそんな話がひっきりなしに出ている。
蓮山は口をつむぎ、開き直す。
「新人とバイクで二勝して勝っても、それは・・・・・・」
どうして、こんなに熱くなっているのだろう。
そう思いながら蓮山は言葉を選んでいた。
「南十字星にとって汚名になる他ありません」