「お嬢様もいらっしゃるんですよね」
「え?」
「南北戦争に」
「その話か。大丈夫、安全だから」
弘人は話を急に変えた椎名の考えがすぐにわかった。
「お嬢様のことが、心配?」
「そう、ですね。心配です」
「お嬢様はいつもこう言ったわがままを?」
椎名は言葉のはじめを濁したが、胸のうちを話し始めた。
「わがままと言えばわがままですね。ピアノの練習が嫌だとか、学校行きたくないって、駄々をこねたり」
ここで、椎名は一旦、思いだし笑う。
しかし、すぐに真剣な顔つきになった。
「でも、はじめてなんです。意欲的なわがままって言うんですか?今まではしたくない、やりたくない、ばかりでしたけど」
「本っ当!この家、腐っているんだわ」

