「大切な人を守るためです」
「それって、冗談―――」
弘人はからかってやろうと思った。
しかし、椎名の目の色が変わり、弘人は武者震いした。
「それって、ユリ子ちゃんのこと?」
椎名は眉を持ち上げる。
"ちゃん"付けしたことが気にさわったのだろうか。
「お嬢様をお守りすることも、ご主人様、奥様もそうです」
「合気道?」
「ええ。少し違いますが、大まかに言えばそうです」
「曖昧な言い方だな」
「そんなに、強さにこだわる理由はなんですか?」
「強さは男の憧れだろ?それに・・・・・・」
弘人が強さにこだわる理由はもうひとつあった。
「俺も同じようなもんかな」
「同じ?」
「大切な人を守るためってやつ」
弘人が照れると、
椎名は先ほどとは別人のような穏やかな笑顔を浮かべた。

