「なんだよ、ソレ。聞いてねぇよ」
「言ってないし」
蓮山は弘人の言いぐさに多少の怒りを覚える。
そのまま、蓮山はバイクにエンジンをかけた。
「恭介。俺と勝負しろ」
弘人は蓮山のバイクのキーを捻(ねじ)り、エンジンをとめる。
「嫌だよ」
蓮山は弘人の手を掴む。
「このままじゃ、俺、悔しいんだよ」
悲しそうな弘人の顔。
「俺はお前と戦う気はない。約束の時間だ。早く行くぞ」
「恭介ぇ・・・・・・」
スルリと弘人の手が落ちる。
「山岡先生、また出直してきます」
「ああ、待ってる」
蓮山は心にズキリと痛むのを感じながら、バイクを発進させた。

