「ユリ子!」
―――え?
ユリ子が振り向こうとした瞬間。
誰かにキツく、キツく抱き締められた。
「どこか、行っちまったかと思った」
頭を引き寄せられ、ユリ子の耳元でそう囁く。
「あの、」
熱く、ユリ子の奥で脈をうつ。
「い、今から向かうところでした」
「時間、とっくに過ぎてるよ」
「弘人さんは?」
「先に向かってる」
「ごめんなさい」
ゆっくりと蓮山はユリ子の頭を撫で、力を抜いた。
体がピッタリとついたままで、顔が近い。
唇が触れ合いそう。
交わしあう目は反らせない。
蓮山がユリ子の顔にかかる髪の毛を払う。
ユリ子は頬に触れた瞬間、跳び跳ねそうなってしまうのを隠した。
「私、今日は友だちの家に泊まります」
「どうして、そんなこと言うの?」
「だって、迷惑じゃありませんか?今日も泊まるって言ったとき、蓮山さんすごく困った顔してた」
「それは・・・・・・」
「私、嫌われたくないんです。蓮山さんに、
「嫌いになんてならないよ」
頬を包む手に力が入る。
「んっ―――」

