バランスを崩しそうになるユリ子。
落とされた場所は、座るにちょうどよかった。
「ああ〜、2個ないや。とりあえず」
上から帽子よりも重いものがずしりと被さる。
「きゃっ!」
ヤンキーはユリ子の顎の辺りをいじる。
ユリ子の頭にすっぽりとはまる。
「バイク?」
じゃあ、これはヘルメット?
ユリ子が認識するまえにヤンキーはブォオオンとエンジンをふかす。
「しっかり捕まってろよ」
ヤンキーがアクセルをあげようとした。
「ま、まって」
知らないヤンキーに、知らないところへ連れていかれる。
そのことがユリ子を止めた。
「なんだよ、降りるか?」
「ええ」
片足を地面につけた。
右のミラーを確認。
スーツ姿の男性がこちらへ走っているのがみえる。
「・・・椎名だ」
「おい、どうすんだ?」
時間がない。
「出て!」
「なんだよ、待てって言ったり出ろって言ったり」
「いいから早く!」
「ったく」
ヤンキーは思い切りアクセルをあけた。
加速。