佐瀬ユリ子(させゆりこ)はいつになく緊張して朝食を迎えた。
屋敷のものはみんな集まっている。
しかし、まだ始まっていない。
全員揃っていないからだ。
席がひとつ空いている。
そこは普段はめったに一緒に食事をしない父の席。
今日は、なんと出席するという。
なのに時間がすぎても姿が現れないのは、
仕事のせい。
この佐瀬家は代々の資産家である。
とくに父は才能にめぐまれ、
あらゆるビジネスに手を出せば必ず成功を収め、
その実績が評価され、佐瀬家は一気に名を馳せた。
そして、娘のユリ子も比例するように有名になった。