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恭平は、一人で病院へ来ていた。

結局、病院へ行けたのが、夏休み初日になってしまった。

テストだ何だと忙しくて、行けなくて、行かなくてもいいかなぁ、状態だったんだけど、樹理に「あんな怖い思いは二度としたくない」と、言われたため、検査だけ受けてみることにした。

あれから、倒れることもなかった。

目眩も、何もなかった。

名前を呼ばれて、内診して「不安ならレントゲンを撮ってみますか?」と言われ、言われるがままにレントゲンも撮ってもらい、待つこと十分。

「及川さん、及川恭平さん」

名前を呼ばれてまた、部屋へ入る。

「どうでした?先生」

「えぇ、とりあえず全部のレントゲンを撮らせていただきました。とくに、異常は……あれ?これって……。及川さん、あなた……男性……ですよ……ね」

「え?あれって、先生?」

恭平は、身を乗り出す。


患者目の前にして、あれ?ってこたぁないだろぉ。


何が言いたいんだ?


「何か、あったんですか?」

恭平は先生に質問する。

「……誠に申し訳ないのですが、私の知り合いが働いている病院で、もう一度検査してもらって下さい。悪い病気ではないのですが、ちょっと気になる所が見えまして、いえ、決して悪い病気ではないんです。ただ知り合いの方が専門なので……」

病院の先生は、言葉を選びながら話した。

「俺の体そんなに悪いんですか?先生」

恭平は、先生の目を見つめる。

「あ、いや。いえいえ、悪いといえば悪いし……いえ……なんと言えばよいのか……」
 
先生は、言葉を濁した。

「その病院へ行けば、俺の体は治るんですね?」

「……私の見当違いでなければ」

「……わかりました」

そして、四つ折にたたまれた、おそらく何処かの病院名が書かれているであろうメモ用紙と紹介状を、恭平は受け取って胸ポケットにしまい、中も見ず、病院を後にした。


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