恭平は、あたしを抱きしめてくれた。

「樹理も大人になった証拠だ。そこまで思うことができるようになったんだもんな」

「樹理ちゃん、あえて言わなかったのは、樹理ちゃんにあんまり負担をかけたくなかったからですよ。樹理ちゃんは、樹理ちゃんらしく及川さんのことだけを見ていてもらいたかったんですよ。私は、医者として当然のことをしただけですから。それより、今日はどうしますか?個室なので泊まっていくこともできますけど?」

若月先生が言った。

「いえ、帰ります。母さんが待ってると思うから、恭平も思ってるより大丈夫そうだし」

「そーだな」

恭平も賛成した。

「じゃ、及川さん、樹理ちゃんを送って来ますから」

若月先生は椅子から立ち上がった。

「よろしくお願いします。樹理、寒いから、ちゃんとコートのボタン閉めて帰れよ」

「うん。恭平、明日病院来てもいい?」

「待ってるよ」

「うん」

あたしは、満面の笑みで答えた。