「え~、今日スパゲッティー食べたかったんだけど」

「何スパ?」

「カルボナーラ」

「すげぇじゃん。作れんの?」

「何、言ってんの。今は、簡単に温めれば美味しいのが食べれるんだよ。安いし」

「……じゃ、それでいいよ。明日、鍋な」

「考えとく。……ねぇ恭平、あたし、学校辞めて働こうかな」

あたしは、恭平に向かって話した。

「なんで?」

 ごく当たり前の質問が帰ってきた。

「だって、母さんがこのままずぅっと何にも言ってこなかったら、恭平だけの収入じゃやってけないでしょ?あたしの今のバイトだって、お小遣い程度だし」

恭平が、あたしの頭をポンポンとたたく。

「お前が、そんなこと気にすんな」

「だって、恭平、知ってた?出産ってお金かかんだよ」

「ウソ……無料じゃなかった?」


何冗談言ってんのよ、知ってるくせに。


「この前久しぶりに妊娠の本読んで分かったの。結構かかるらしいよ」

「気にすんな。俺だってちゃんと考えてるから」

「赤ちゃん刺激するようなこととバレるようなことはやめてよね」

あたしは、恭平のお腹を指しながら言った。

「……はいはい」

恭平は、やれやれって顔であたしの顔を見た。

「シャワー浴びてくる」

恭平はタオル片手にお風呂場へ行った。

あたしは、恭平がお風呂場へ行ったのを確かめてから、祐子の家へ電話をかけた。

「もしもし、服部と言いますけど、あ、祐子?あのさ、この前紹介してくれたバイト、明日からでも大丈夫だよね。そう、冬休み中だけ」

恭平には申し訳ないけど、やっぱりお金が必要なのは確かだし、あたしは、恭平に内緒でバイトをしようとしていた。

その後、このバイトのためにあんな事が起きるなんて、今のあたしには、ひとかけらも考えていなかった。

全ては、恭平のため、そう思っていた。