十二月、昨日に引き続き今日も雪、外は一面の銀世界。

恭平は、一ヶ月くらい前に、やっと後任の先生が見つかって学校を辞めた。

全校生徒には、一身上の都合でとありふれた言葉で挨拶をしていた。

所々、病気だとか、結婚だとか、噂は適当に流れていたが、事実を知る者はあたし以外誰一人いなかった。

学校も、冬休みに入っていた。

同棲生活も一ヶ月を過ぎると、新婚気分なんてもんじゃなくなってくるし。

恭平は今、若月先生の病院でお世話になっているらしい。

何かあった時もすぐに診てもらえるし、いちおアルバイト扱いにしてもらえてるみたいで、多少お給料もでるらしいし。

仕事内容は、母子学級に来たお父さん達に、妊娠はお父さんの手助けも必要なんだよ。って説明して、妊婦さんの重さが分かる道具があって、それをお父さんに付けさせて「奥さんを大切にしましょう」って言いまくってるみたい。

いろんなお母さんから、恭平は、妊婦さんの気持ちがよくわかる先生だって言われてるみたい。

笑っちゃうのが、たまに、妊婦さんに重さが分かる道具を毎日つけてて大変ですね、休憩の時くらい外さないと疲れちゃいますよ。って言われるみたい。

そんな時、恭平はなんて返事をしてるんだろう。

あたしはそんな様子を勝手に想像して、一人でニヤニヤ笑ってしまう。

赤ちゃんは、何事もなく順調に育っているということだった。

あたしは、最初の頃のように、恭平と一緒に検査結果を聞きに病院に行くということをしなくなっていた。

だから、赤ちゃんの発育経過は、恭平から聞くだけになっていた。

あたしは、学校のある日は学校に行って、その帰りにコンビニでバイトをしていた。

「樹理この前、通販で頼んだ服そろそろ届く頃なんだけどきた?あと五日で同窓会だから、それ着てくつもりだったんだけど」

「今日、届いたよ。引き出しにしまってある」

「サンキュ。今日も寒いな、夕飯何?鍋食おうよ」