「お前それって、勘当してきたって事か?」

恭平は、あたしの涙をバスタオルで拭いながら聞いた。

「勘当するとは言われたけど、勘当してきた覚えはないよ」

あたしは、キョトンとしている。

「だって、家を出たら勘当なんだろ?ってことは理由はどうあれ、お前はあの家を出たことになるんだから……」


え、あたしって、自分から勘当して来ちゃったの?


そんなつもりじゃなかったのに……。


とりあえず、母さんに恭平の辛さを分かってもらえなかった悔しさを恭平に聞いてもらいたかっただけなのに。

「バカだなぁ。電話すりゃすむことだろーが」


ヴッ……。


そうだ、電話という便利な物があったんだ。


「どうしよぉ」

さすがに、恭平も困ったみたいだった。

母さんに電話を掛けたけど、一向に出る様子はなかった。

「ダメだ。二十回のコールも無視された」

恭平が、受話器を戻しながら言った。

「ごめん。いいよ、あたしどっか泊まるとこ探す」

「どこ?」

「どっか。いざとなったら、野宿でもいいもん」

「タコ。そんなことさせられるかよ。ったく……ホントは、お母さんに了解もらってから、やろぅと思ってたんだけど、仕方ねぇな、ここにいろよ」

「ここって、ここ?」

あたしは、恭平の部屋を指しながら聞き返した。

「ホントは友達の家にでも行くんだろうけど、腹のこともあるから、何かと側にいてくれたほうがいいって言うか、俺も安心っていうか……」

「うんっ。いいよ」

あたしは、二つ返事でOKをだした。

「げんきんな奴」


二学期が始まった今現在、あたしと恭平は、誰にも知られないように、同棲生活を始めていた。