母さんは、スースーと寝息をたてている。


ごめんね、母さん……。


迷惑をかけるつもりはなかったんだけど……。


あたしだって、正直まだ不安になる時はあるんだよ。


でも、何度考えても現実のことだし。


……父さんが生きてたら、なんて言うのかな。


そしたら、そんな時は、母さんは味方してくれるのかな。


いっそのこと、ドッキリだって言っちゃおうか。


今までの全部ウソだよって……。


恭平の妊娠も……。


……すべてウソなら、どんなにいいことか……。


あたしは、あふれてくる涙をそのまま流し続けた。


何か、悪いことしたかな、あたし達……。


教師と生徒の恋愛だから?


あたし、バカだから、分かんないよ……。


何も思いつかないよ……。


助けてよ。


助けてよ、恭平。


母さんに、なんて言えばいい?


なんて言えば、母さんは納得してくれるの?


あたし、一人じゃ難しいよ……。


あたしは、テーブルに伏せてしばらくの間泣いていた。

母さんは、夕方になってから目を覚ました。

「樹理、いるのかい」

ドキッ。

母さんが声をかけてきた。

あたしは、泣きすぎて目をはらしながら答える。

「なに?」

「夕飯、何食べたい?」

恭平のことを言ってくると思っていただけに、意外な質問に、あたしは面喰った。

「あ、いい。いらない……ちょっと出かけようと思ってたから」

「どこに行く気だいっ。恭平さんのとこかい!あの人の所だったらダメだよ!」

母さんの口調が突然変わった。

「どうしてっ」

思わずあたしの声が、怒り口調になってしまった。

「当たり前でしょ。あんな変な男の所へ大事な娘を行かせる親なんて、どこにいると思ってるんだいっ」

「付き合ってるんだよあたし達、母さんだって認めてることでしょ。会いに行って何がいけないの?」

「何言ってんだい!それは普通の人間として認めていたからだよ。あんな体の人を認めるわけないだろっ。あの体でどうやって生活していくつもりだい」