「なにそれぇ。ウケルー。そんなのわかんないよ~。恭平なに言ってんのー。おっかしぃ、お腹、お腹イタイ」

あたしは、わき腹をさすり、涙を流しながら笑い転げた。

結局、あたしは赤ちゃんが動いた感触を体験することが出来なかった。



 ―服部家―

「あら、恭平さん久しぶりね。いっつも樹理が迷惑かけてるんじゃない?」

母さんは、機嫌がいいようにみえた。

母さんは、遅くても夕方までには仕事から帰って来ていた。

「あの、今日はおりいってお話があるんですが」

恭平が緊張している。

「そぅ、とりあえず座ったらどぅ?」

母さんは、上座の席に恭平とあたしの二人分の席を用意した。

「樹理、お茶用意して、で、なにかしら?」

「あの……実は、ですね……」

「男らしくないねぇ。はっきり早く言いなさい。先生なんだろ、生徒に話す時もそんななのかい?」

あたしが三人分のお茶を持ってきて、母さんと恭平に配る。

コホンと、咳払いをひとつして、あたしは恭平の右隣に座る。

「恭平、あたしが言うよ。……あのね、母さん。実は妊娠してるのよ」

「なに?ニシン?」

母さんは、聞き返した。


恭平は魚かいっ。


「妊娠。今五ヶ月」

母さんはあたしをじっと見つめている。

「ホントなのかい?病院行ったの?何でもっと早く言わないんだいっ、このバカ娘っ!」

母さんは、隣近所にも聞こえそうな大声であたしを怒鳴りつけた。


ひぇ~。


久しぶりに怒られると迫力あるなぁ。

「それで、相手はもちろん、恭平さんなんだろ?」

母さんは、恭平をジロッと睨んだ。

「困るよ恭平さん。まだこの子は高校生なんだよ、セックスするのが悪いとは言わないけどさ、せめて避妊ぐらいの知識を持っててくれなきゃ、恭平さんの責任ってのは、あれだろ?結婚したい、ってんだろ?あたしはね、この子と恭平さんの結婚には大賛成だよ。家には、あたしとこの子だけで、満足に愛情を注いであげられなかったからね。でも、ほら、世間体ってのがあるだろ?これからこの子、どぅすればいいんだい?」