「したいよ!したいに決まってるじゃん!でもさ、今すぐじゃなくてもいいかなぁ。って今は思ってる。無事に赤ちゃん産んで、それからでも、いいんじゃないかなぁ。って思ってたんだけど、ダメ?」

「そーか、わかった。そういえばこの前、若月先生が、母子健康手帳の発行はどうした?って聞いてきたけど、どうした?」

「もらってきたよ、引き出しに入れてあるよ」

「……もぉ五ヶ月目だもんなぁ。樹理のお母さんにも言わないと後々大変だよな」

「後々って?」

「だからさ、例え今結婚してなくても、いつかはするだろ?そんな時に、子供のことも理解しあってなかったら、俺たち結婚どころか付き合うことも、たぶん樹理の顔を見ることさえも出来なくなるぞ」

「そんなのダメだよ!なんとしてでも母さんには認めてもらう。父さんが生きてたら、また話しは変わってくるかも知れないけど、父さんがいない分あたしは、母さんにはちゃんと認めてもらいたいの」

「ちょっと、勇気いるけど、今から行くか?あ、動いた」


え?


動いた?


「赤ちゃん?お腹?動いたの?どうやって?」

あたしは、恭平のお腹に慌てて手をやる。

三十秒くらい息をひそめて待ってるけど、なかなか動く気配はなかった。

「どうやって動いてるの?赤ちゃん蹴っ飛ばしたの?」

あたしは今度恭平のお腹に耳をつけて待ってみる。

「そうだなぁ。ゴニョゴニョって感じ?」

「ゴニョゴニョ?」

「そ、例えば、おたまじゃくしが動いてる感じ?」
 

おたまじゃくし~?


「お腹ん中でおたまじゃくし?」

あたしは、すごい嫌な顔をして聞いた。

「だから、そんなイメージ?」

「気持ち悪い、イメージ良くない。却下。他は?なんか、もっと、こう、あるでしょ?」

「ん~。例えば」


赤ちゃん動かないなぁ。


あたし、意地悪されてんのかなぁ。


恭平が次の事例を出す。

「へが」

「へ?」

「おなら」


おなら?


あたしは、思わず恭平の顔を見る。

「そ、へを我慢して空気を腸に戻した時の微妙な動き?」

あたしは、思わず大声で笑う。