「ごめんね……。赤ちゃん、あたしが授からないで、ごめんね」

「何言ってんだよ。謝るなよ、大丈夫だから。……樹理、今すぐには無理かも知れないけど、覚えておいてくれ、近い将来、及川樹理になってくれ。俺には樹理しかいないから、付き合い始めてすぐの頃から、俺の中では、俺の嫁さんは樹理だって決めていたことだから、お前と一緒に未来をみていきたいんだ」

恭平は、優しくあたしの耳元で言ってくれた。

「うん……」

心の呪縛が解けたようだった。

「恭平?あたし、恭平の役にたってる?」

「たってるさ。側にいてくれるだけで、安心するんだ。お前は、何にも心配しないで俺の近くにいて、笑ってくれてればいいんだ」

「……」

あたしは、恭平に向かって優しく笑いかけた。

そして、若月先生を見て。

「若月先生」

「なんですか?」

「あたし、恭平の役にたってるって」

若月先生は、よかったですね。と笑ってくれた。

「……職員室の話しな、アレたぶん先生達と冗談言ってた時の話しの延長じゃないか?誰が早く結婚するかって話の。それと校長にも話ししたけど、後任がいつ見つかるかわかんないって。だから、辞めるのも明日明後日の話しじゃないから」


じゃ、全部あたしの勘違い?


こんな、ツライ思いして……。


流さなくていい涙まで流して……。


でも、恭平の本音が聞けた。

あたしは、恭平について行けばいいんだね。

「若月先生、恭平に赤ちゃんが出来た原因はわかったの?」

若月先生は、黙り込んで、あたしを見て言った。

「申し訳ない。こればっかりは、私達も未だに分かんないんです」

若月先生は正直な先生だと思った。

「先生、話を聞いてくれてありがとう。あたし、今日おかしかった。でも、大丈夫。恭平があたしを信じてくれてる。あたしも、また恭平を信じることが出来たよ。恭平と、これからまた頑張るよ。受け入れるしかないんだよね。大丈夫、先生見てて、あたし恭平のためにもっと頑張るから!」