あたしと、恭平が二人同時に返事をする。

「日本ではこんな前例がありません。ですから、常にケースバイケースで話し合っていかないといけません。少しでも、体調がおかしかったら、私に報告して下さい」

「はい」

「それと、学校の先生と伺いましたが、新学期が始まってからのことも考えといて下さい。医者側の意見は、今すぐにでも学校から離れて、お腹のことだけを考えていただきたい。と考えています」

「はい、分かりました。でも、まだすぐには辞められません。もう少しギリギリになってから、何か理由をつけて辞めようかと思っているんですが」

「もし、世間体を考えるなら、ギリギリで辞めるのは避けたほうがいいでしょう。女性の妊婦のお腹の出方は、急速に出てきます。隠し通せるものではありません。ましてや、あなたは男性です。どうなるか分からない状態なんですよ。そのことを常に頭に入れておいて下さい」

「分かりました。考えておきます」


恭平。


ホントに産む気なんだ。


「樹理ちゃん、君も及川さんを助けていかないといけないよ。一番身近にいるのは樹理ちゃんなんだから、しっかりサポートしてあげてね。これから悪阻で大変になるかもしれない。もしかしたら、その日その日で、もっと大変な事が出てくるかもしれない。あなた達は、常に対応していかなければいけないのです」


はぁ。


「緊急の時の連絡先なども後日お知らせしますね。何かあったら遠慮なく掛けて下さい」

あたしは、まるで秘密結社でも始めたかのような気分になった。