現代アリス∞

目を閉じる事が出来ないよ
恐怖心が体中に染み渡る

怖いよ・・・怖いよ・・・怖いよ
助けて・・・チナツ・・・ヒカル・・・!!

心の中で助けを求めても、誰も助けにきやしない
仮に叫んだとしてもヒカルがまだこの学校の中にいるかどうかもわからない
それ以前恐怖で声が出ない
こんな状況でも一滴も流れない涙が憎たらしい
きっと涙を流す事が出来れば、視界がぼやけて余計なものを見ずに済むんだろうに。

動かない体を抱えたまま私は半ば無理やりに少年を凝視する
すると意外にも少年は被っていたフードを取り私に向かって微笑んだ。

「アリス・・・一緒に兎を追いかけよう」

何・・・言ってるの?
この人・・・

少年が微笑むのとほぼ同時に体の痺れが取れてくる
意味の解らない言葉と共に差し出される手
長い爪
ひっかかれたら痛そう

少年は何かに私を誘っているようだった

・・・嫌だ

私は首を横に振る

「一緒に兎を追いかけよう」

それでも少年はただ先程と同じ台詞を再び繰り返すだけ
どこか悲しそうな笑顔が私の胸をつんと突く
痛い・・・っ
とっさに自分の胸を押さえた
特に怪我をしているわけでもなんでもない
ただ、妙に胸が痛んだ

少年はただ変わらず笑顔で私に手を差し伸べていた

「そんなの待ってないで無理やり連れて行けばいいだろ」

私は、はっとして少年のやや斜め上を見る。
そこにはもう一人の少年が立っていた

いつの間にこちらへ来たのだろう?

もう一人の少年はごそごそとローブから手を出してフードを脱ぐ
そして私の方をじっと見据えた

「・・・!?」

そのフードの下に隠れていたのは・・・先ほどから私に手を差し伸べている少年と同じ顔。
・・・兄弟?
でも、手を差し伸べている方の人とは少し雰囲気が違う
なんだかこの人の周りにはピリピリとした空気が渦巻いている様な気がした。

先ほどまで手を差し伸べていた少年が突然顔を上げて私に話しかける。

「僕はシロネコ。彼はクロネコ」

シロネコと名乗る少年は後から来た少年をクロネコと呼んだ。

変わった名前だな
外人さんかな?