Leave a prove

「それにしても春貴もあんな表情するんだね。人が変わったみたいだったし…」

「そりゃアイツも譲れないものがあるんだろうよ。少しはムキにもなるさ…」

二人の女性の会話に、低い声が混じり出す。二人が後ろを振り返ると、複数のピアスを顔に着けた男が二人を見下ろしていた。

「アンタが学校の行事に顔を出すなんて珍しいわね。どういう風の吹き回し?」

「こっ…こんにちわ」

突然現れた拳にサクラは普通に対応し、真紀はシドロモドロに挨拶を返す。

「ダチの応援ぐらいしようと思っただけさ。はい、こんにちわ…」

律義にも拳は、サクラに返事を返したあと、真紀にも挨拶を返していた。すると拳は、サクラの隣の席が開いている事に気づいたのか、そそくさと隣の席を陣取り、足を組みながらコートの方に視線を向けた。

「ハーフタイムってやつか。点数はどうなってんの?」

「まだ0-0よ。後半勝負ね」

「ふーん…あっそ」

興味があるのかないのか解らない態度の拳。校則を守る気などない様な拳の風貌に、真紀は口を挟む事が出来なくなっていた。

「おっ?」

拳は何気なく春貴や直輝達に視線を送っている、そう口を漏らした。二人も拳の視線の方を見てみると、春貴と友里が楽しそうに会話をしているところだった。

そんな二人を注意深く3人が見ていると、春貴が友里の顔を突き、逃げる様にピッチに戻って行くところだった。

「随分と余裕があるな春貴のやつ。まぁあの二人は昔からあんな感じでもあるしな…」

「そうなの?」

拳の呟きにいち早く反応を示したのは真紀だ。さっきまでの遠慮していた姿はない。

「まぁな。幼馴染ってほどじゃないが、春貴の妹が友里に凄く懐いてるんだよ。よく登下校であんな風に話しているところを見た事があるんだよ」