俺の居る位置は、敵陣地の中央寄りの位置だ。そこから敵を全て抜き去る事など不可能に近い。なので俺はサイドや中継を使いながら、ラインを上げて行き、勝負を仕掛けるポイントを探す。

俺はすかさずサイド寄りに移動し、パスを受けると、そのまま前を向いて相手のＧＫの位置やディフェンスの位置を瞬じに確認しながら攻めに転じた。

俺の前には当然のように長澤が居て、勝負をかけるスペースを開けてはいない。だが俺はお構いなしに、正面から突破を仕掛けに行った。

少しでも長澤のポジションをずらす事が出来れば、ゴールにシュートを打つ事が出来る。

一対一の状態ではない正面突破は、正直無謀な作戦だ。だが前半のうちに点数を取れれば今後の展開が俺達側に傾く事になる。

それにどのみちどこかで勝負をかけないといけない場面が出てくる。これまでの展開は両チームとも守備的な展開をしていたから。

そろそろＧＫにプレッシャーをかけても良い時間帯だろう。

正面から切り込む様に俺は仕掛けて行った。選択肢はいろいろある。その中で長澤は俺の動きを読んで、俺を止められるかな？

時間をかけると囲まれる可能性が高いこの位置。俺はスピードを殺さないように上体だけで揺さぶりをかけた。

簡単に言えば、左に行くと見せかけて右に行くだけのフェイント。だがこれが一番効果的で、実践向きなフェイントなのだ。

案の定長澤は、俺の動きに瞬時に反応したせいで俺のフェイントに引っかかった。そのおかげでゴールへの軌跡が見えた…。

俺はすぐにシュートモーションに入り、シュートを打とうとした。だが俺がシュートを打つ前に、俺の体が宙を舞った。