「よしっ帰るぞ」
彼は私の腕を掴み歩きだす

「ねぇ…純恋さんて誰?」


無意識に口にした言葉だった
どうしてこのタイミングで言ったのか自分でもわからなかった


ただ気になっていたことが溢れ出すように自然に口からでた


「誰…?」
もう一回覚悟を決めて言った

彼の顔色が変わっていく


「ごめん…」
彼はそう言ってうつむく


「え?なにが?」
謝る意味がわからない


「ごめん…」
彼はそう謝るばかりで私の問いに答えてはくれなかった


「ごめん…」
私も反射的に謝ってしまう


そのまま彼は
「家まで送る」と言って
私を車にのせた



家につくまで一言もお互い言葉を交わすこともなく
ただ重い時間が過ぎて行く

気まずい沈黙…


家までそう長い距離ではないのに
ずいぶん時間がかかったように感じた



「ありがとう」
それだけ言って家に向かう

「じゃぁまた明日学校で」
そう言って彼の車の音が遠ざかっていった