プライベート・スカイ

それから数日、青山さんは店には来なかった。

あたしも特にメールもしなかったし。用事もないし。

レイナちゃんとは時間作って会ってるんだろうと思ってたから、わざわざ聞いたりしなかった。

だけど、なんか今夜のレイナちゃんは様子がおかしくない?

「今日のレイナ、ちょっと飲み過ぎじゃない?なんかあったのかな…」

マスターにも言われて、ああ、やっぱ変だよねって思った。

あんまり酷いようなら途中で止めようと思ってたけど、レイナちゃんは平気な顔して仕事していた。

最後のお客が帰ると、レイナちゃんは気持ち悪そうに口に手をあて慌ててトイレに入った。

…やっぱり飲み過ぎだったんだぁ…

飲み過ぎて吐く子はたまにいたから心配にはならないけど、あたしはトイレの外から彼女に声をかけた。

「レイナちゃーん、大丈夫~?おーい」

「…」

「倒れる前にドアの鍵は開けておいてね~」

「…」

何度も胃の中のものを吐き出す音が聞こえる。
しばらくして、トイレを流す音と共にドアの鍵が開いた。

「ゴメン…雨峰ちゃ…」

今にも倒れそうなレイナちゃん。

持っていた小さなポーチが落ちて中から見覚えのあるハート型の薬が見えた…