嫌な事を思い出す。
せっかく忘れていたのに

…いや、忘れようと努力していたのにレイナの話しでオレはその時の記憶を鮮明に思い出した。



白い肌。細い手。

家の階段の吹き抜けの高い場所にあったステンドグラスから差し込む幻想的で柔らかな光。

『──透依…………』

オレを呼び、何か言ったと思ったら────母親は宙を舞った。

白い服は天使の羽根のように見えたけど

現実は全然違っていた。母親は階段の手すりに紐をかけ、首をつっていたんだ。

オレが騒いだおかげで父親やお手伝いさん達が来て母親を助けた。



「お母さんは死んだ…一緒に死にたいって何度もお願いしたのに、何度か私の首を絞めて死のうとしてくれたのに

結局…独りで死んで、私はこの世で独りぼっちになった…」


レイナの話しを聞いていると、吐き気がしてくる。

──オレの母親は助かった…

助けられて、だけど気管が絞まったおかげで酷くむせかえり鼻血をドクドクと流してる状態で
怒った父親に何度も殴られてたよ…

その後も、何度も自殺を図った。
今もなお生きてるけど

レイナはオレの母親に似てる…そんな気がして嫌な気分だった。