プライベート・スカイ

「どうして…」

「あの家の全てが透依のものだったからさ」

「…は?お前なに言ってんの?青山の家は佳依に継がすって親父は言ってたぜ?」

「ハハッ…ホント、兄貴って単純だよな」

「何がおかしいんだよ」

「親父が本当に家を継がせたいのは透依なんだよ。
外の会社に就職させたのも勉強のため。

俺は、いずれ社長を継ぐ透依のサポートをさせるために親父の会社に就職『させられた』」

「そんなのウソだ!お前の方が何だってやれたし成績だって優秀だった!
いつも親父はオレ達二人を比べて

『継がせるなら佳依だな』って言ってた!
だからお前が青山の家の全てを手に入れるのが悔しくてオレは─」

「'頑張った'だろ?」

「…」

「それは全部親父がわざと言ってたからだ。『教育』だったんだよ」

佳依はタバコに火をつけて、大きく吸い込んだ。

ため息のように煙を長く吐き出す。

「俺がどんなに頑張ったところで家も会社も手に入らない。せいぜい常務とか副社長とか…」

「…親父がそんな事…するなんて思えない」

「信じないならそれでもいいけど。結局は親父も母さんさえも、長男が可愛くてしょうがなかったんだよな」

「母さんも?」