プライベート・スカイ

だけど、あたしは違和感を覚えた。

幸せそうに…笑うんだ、この人。

多分、40代後半の女性。美人で、質もセンスも良い服を身につけていて

高級ホテルのスイートを利用できて、人気のケーキも簡単に買えて『ショパン』という名の愛犬がいて

'幸せ'そうに笑えるのに

──どうして…

「…どうしてSweetPainなんかを買うんですか?」

「え?」

あたしはどうしても聞いてみたくなった。

「あたしに知識なんかありません。でもこれは…この薬は'ドラッグ'です。
麻薬ですよ?どうして使用してるんですか」

「そんな事を聞くなんて…不思議な人ね。貴女はコレを売る側の人間なんでしょう?」

「今はそうです。でも分からないんです!誰かに勧められたんですか?
それともコレはファッションなんですか?」

「成金が調子に乗ってドラッグを使用してるように見えるわよね」

「そんな風には思いません!でも…必要ないと思うんです!」

ケーキの味も、紅茶の香りも分からなくなってしまった。

あたしはちょっと興奮し、鼓動と罪の意識が大きくなる。

彼女は怒るわけでもなく、少し悲しそうに笑いながら答えた。